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九州で相次ぐ駅ビル建設とその展望-大分の場合-長嶋不動産鑑定事務所/土師一弘

 

JR九州が発表した2014年3月期の設備投資額は前年比49%増の621億円と過去2番目に高い水準となっており、その中心が総事業費約200億円、本年4月30日に着工し、2015年春に竣工予定のJR大分駅ビル(仮称)の建設である。

 

JR大分駅ビルは地上21階建、1~4階が店舗、上層階にはホテル、温泉施設が入る。延べ面積約10万7千㎡のうち、約3万1千㎡が店舗で、物販、飲食、シネマコンプレックスなど170店舗が出店する予定。規模としては、9年前に開業した鹿児島中央駅ビル並みであり、初年度の売上げは190億円、1日の来客数は3万人を目標としている。

 

九州の主要駅では、駅ビル再開発事業が盛んで、現在4ヶ所で複合商業施設「アミュプラザ」が営業している。以下、3つの巨大駅ビルについて紹介する。

1.鹿児島中央駅に2004年に開業した「アミュプラザ鹿児島中央」(営業面積3万3千㎡、約190店舗、2012年度売上額約232億円)

2.長崎駅に2009年に開業した「アミュプラザ長崎」(同2万3千㎡、約150店舗、同年売上額約186億円)

3.博多駅に2011年に開業した「アミュプラザ博多」(同5万7千㎡、約230店舗、同年売上額約342億円)

 

これらの駅ビルは、各都市の中心繁華街からは離れ、それらの地域とは競合関係にあるが、博多駅ビルは九州最大の繁華街「天神」を脅かす存在であり、鹿児島・長崎の両駅ビルは長らく地域経済の中心であった「天文館」や「浜町」に代わる核にまで成長しつつある。

 

一方、大分駅は中心繁華街である「中央町・府内町」に隣接しているため、JR大分駅ビルは既存商店街と一体的な発展が期待できることが他の駅ビルと異なる大きな特徴である。また、JR線により分断されていた駅の南と北が、線路の高架化と区画整理事業により様相を一変しつつあり、これまで“駅裏”として位置づけられていた駅南地区が駅北側と一体化して発展することによる相乗効果も大きい。

 

大分駅周辺の繁華街は郊外の大型商業施設との競争に敗れ、ダイエー・ジャスコ等は相次いで撤退した。アーケード街は空き店舗の増加等により空洞化が進み、これに対する抜本的な解決策が見い出せない状況にある。しかし、JR大分駅ビルの建設により、相当数の顧客が中心繁華街に戻ってくることは確実である。反面、中心市街地の商店街がこれに飲み込まれ、一層窮地に追い込まれるとの意見も一部に聞かれる。これを危機と捉えるか、チャンスと捉えて駅ビルと一緒に発展させて行くかは、地元の決意・熱意・工夫次第である。

 

株式会社長嶋不動産鑑定事務所

不動産鑑定士 土師 一弘

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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