工場財団の財団評価2(組成手続き)
財団評価の手順
工場財団の鑑定評価のご用命をいただきますと、担当の不動産鑑定士、機械設備等の評価専門家が以下の手順で鑑定評価を行ない、その結果を「鑑定評価書」としてご報告いたします。
鑑定評価は、「不動産鑑定評価基準」等に則り、原価法、取引事例比較法、収益還元法の三方式を、対象に応じて適用して行ないます。なお、ご提出いただく資料は後記のとおりです。
フローチャート
- 鑑定評価の依頼受付 (ご依頼書受付、諸資料のご提示)↓
- 処理計画の策定→ ご提示の諸資料に基づいて行ないます↓
- 予備調査↓
- 現地調査(工場・登記所・市役所・町村役場等)↓
- 鑑定評価作業(3方式の適用)↓
- 鑑定評価額の決定↓
- 鑑定評価書の交付
準備と前提手続
1. 組成物件の選択と決定
現在及び将来にわたって企業が期待する融資額と担保価値との比較検討後に、組成物件の選択と決定を行ないます。この際、以下の点に注意する必要があります。
- A. 組成可能物件は、土地、建物、工作物、機械器具、船舶、地上権、賃貸人の承諾のある賃借権、工業所有権、ダム使用権、自動車等です。少なくとも、土地もしくは建物、またはその地上権もしくは賃借権を含めなければなりません。
- B. 未登記、未登録の物件(例えば未登記の建物、未登録の自動車)は、その所有権保存の登記または登録をしなければなりません。
- C. 他人の権利や差押え、仮差押えまたは仮処分の登記、登録がされているものは、これらの登記、登録を抹消しなければなりません。
- D. これらの物件が他の財団に属していないことも要件の一つです。
2. 担保価値の向上
組成物件が決定すると、工場毎に財団目録を作成します。目録の記載方法は、「工場抵当登記取扱手続」で具体的に定められています。
3. 工場の図面の作成
- A. 複数の工場をもって1財団を設定する際は、工場毎に図面を作成します。
- B. 図面には、工場に属する土地および工作物の方位、形状、長さならびに重要な付属物の配置を記載します。
- C. なお、工場の一部をもって財団を設定する場合には、図面の上でその財団に属する部分と属さない部分との区分を明らかにする必要があります。
4. 管轄登記所の決定
工場所在地の法務局あるいは地方法務局またはその支局か出張所が管轄登記所となります。工場が複数の登記所の管轄区域に跨っていたり、数工場をもって1財団を設定する際に各工場が複数の登記所の管轄区域に所在する場合は、特定の登記所を選択し、法務局長(または地方法務局長)に管轄指定を申請して管轄指定書の交付を受けなければなりません。ただし、複数の法務局または地方法務局の登記所の管轄区域に跨る場合は、法務大臣の指定となります。
登記申請手続き
1. 登記申請書の作成
登記申請書には「不動産登記法第36条第1項第2号乃至第7号に掲げたる事項」のほか、工場の名称及び位置、主たる営業所、営業の種類等を記載します。
2. 添付書面
申請書に添付する書面は次の通りです。
- A. 申請書副本
- B. 財団目録
- C. 工場の図面
- D. 管轄指定書
- E. 賃貸人の承諾書
- F. 工業所有権者の承諾書
- G. 代理権限証書(委任状)
1. 登記申請書の作成
- A. 所有権保存・・・・・・・・・・・・ 30,000円
- B. 抵当権設定・・・・・・・・・・・・ 債権額の1,000分の2.5
- C. 抹消・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 6,000円
登記手続き
1. 登記申請書の受付
受付がされますと、登記官による書面審査が行なわれます。
2. 登記申請の旨の公示等
土地、建物等登記のあるものは、職権で関係登記簿に「工場財団に属すべきものとしてその財団につき所有権保存の登記申請があった」旨と申請書受付の年月日および受付番号が記載されます。この場合、他の登記所の管轄区域に存する物件については、財団の管轄登記所からその登記所に通知がされ、同様の記載が行なわれます。
なお、この手続は、工業所有権、自動車またはダム使用権にも準用されますが、この場合、「他の登記所」に当るのは、各々特許庁、国土交通大臣となります。
以上の公示がされますと、以降はこれらを譲渡したり、所有権以外の権利の目的とすることが一切禁止されます。
3. 官報公告
登記、登録の制度がない機械器具等の動産については、登記官は職権で官報に「工場財団に属すべき動産について権利を有する者、または差押え、仮差押えもしくは仮処分の債権者は、一定の間(1ヵ月以上3ヵ月以内)にその権利を申し出るべき旨」を公示します。
3. 官報公告
登記官は、以下の項目について審査し、官報公告期間内に権利の申し出等の却下事由が生じなければ、登記申請を受理することになります。
- A. 不動産登記法第49条の規定による却下事由の有無。
- B. 登記簿もしくは登録に関する原簿の謄本により、財団に属すべきものが他人の権利の目的とされていないかどうか。あるいは、差押え、仮差押えもしくは仮処分の目的とされていないかどうか。
- C. 財団目録に掲げられたものの表示が、登記簿もしくはその謄本または登録に関する原簿の謄本と一致しているかどうか。
5. 登記の実行
A. 時期
登記実行の時期は、官報公告の期間内に権利の申し出がない場合は、公告期間満了日の翌日となります。公告期間内に第三者の権利の申し出があった場合は、公告期間の満了後さらに1週間の経過を待って、権利の申し出の取り消しやその申し出について理由のないことを申請人が証明した時点が登記実行の時期となります。
B. 財団登記簿の記載内容
- (イ) 表題部
- 財団の表示、すなわち工場の名称および位置、主たる営業所、営業の種類ならびに申請書の受付年月日が記載されます。
- (ロ) 甲区
- 財団の所有者の所有権が登記されます。これが財団の所有権保存の登記であり、登記の目的(所有権保存)、受付日、受付番号、所有者名が記載されます。
C. 関係登記簿等の記載
所有権保存登記がされますと、その財団に属するもののうち、「登記あるもの」の登記簿に「工場財団に属したる旨」記載されます。財団に属しているものが、他の登記所の管轄に属する場合や、工業所有権、自動車またはダム使用権が事前に当該登記所、特許庁、国土交通大臣に所有権保存の登記申請が行なわれた旨通知されている場合は、管轄登記所からこれら諸官庁に対して関係物件が「工場財団に属したる旨」通知され、諸官庁は関係登記簿または登録原簿にその旨を記載して公示します。
6. 登記の完了
以上の一連の手続が完了しますと、申請書副本に受付日、受付番号、順位番号及び登記済の旨が記載され、登記実行日および登記番号を付記して登記所印が押印されたもの(いわゆる登記済証)が申請者に交付されて登記が完了します。なお、以後、財団抵当の設定登記を申請する場合には、その登記済証を添付することになります。
7. その他
- A. 所有権の保存登記後、6ヵ月間にわたり抵当権の設定登記がなされない場合、または全ての抵当権が抹消された後6ヵ月間、抵当権の設定登記がなされない場合には、職権にて抹消されます。
- B. 工場財団とこれに属さない他の管轄に属する不動産とを共同担保として抵当権設定登記をする場合は、工場財団を先に登記すれば、登録免許税は、債権額の1,000分の2.5+1,500円/1筆となりますが、不動産を先に登記すると、1,000分の4+1,500円/1筆となりますので、注意が必要です。
ご提出いただく資料
A. 物件明細
種類 | 必 要 記 載 事 項 |
---|---|
土地 | 所在、地番、地目、地積 |
建物 | 所在地、家屋番号、種類、構造、階数、延床面積、取得時期、取得価格、簿価、 法定耐用年数、付保額 |
工作物 | 種類、構造、数量(面積、延長等)、取得時期、取得価格、簿価、法定、耐用年数 付保額 |
装置・機械 器具等 |
種類、構造、型式、能力、製作者名等、数量、取得時期、取得価格、 簿価、法定耐用年数、付保額 |
車両運搬具 | 種類、年式、製作者名、原動機の型式、積載量等、取得時期、取得価格、簿価、 法定耐用年数、付保額 |
船舶 | 種類、名称、船籍港、船質、総トン数、純トン数、エンジン馬力、建造時期、 取得価格、簿価、法定耐用年数、付保額 |
(注) 土地、建物については、原則として登記簿謄本および固定資産税評価証明書を添付してください。なお、土地が借地権の場合は、借地契約書(写)を添付してください。
B. 添付書類
申請書に添付する書面は次の通りです。
- イ. 財団目録
- ロ. 位置略図
- ハ. 敷地図(できれば公図写または土地家屋調査士の作成した図面)
- 二. 建物、工作物、機械配置図(組成物件明細との対照符号記載)
- ホ. 会社経歴書
- へ. 工場案内および主要製品カタログ
- ト. 直近の過去2年分の営業報告書または有価証券報告書、対象工場の生産販売状況
- チ. その他参考資料