いわゆる「車返団地事件」にみる固定資産課税評価と鑑定評価について - 評価コンサルオフィス・ケン/桂 健二
あるきっかけにより、いわゆる「車返団地事件」の最高裁、東京高裁の判例を閲覧、その内容を確認することとなりました。これについて私の感じたことを述べてみます。
この事案は固定資産課税評価額を不服として申し立てられたものです。固定資産税、都市計画税は賦課課税方式により課税庁である市区町村が課税評価額を評定して税額を決定して賦課していますが、納税義務者等からの不服申し立てにより「税額修正」が行われる場合があります。平成24年総務省調査結果によると、修正要因として土地、家屋とも「課税評価額の修正」が約30%弱を占め最多となっています。即ち原因として固定資産評価基準の適用判断の誤りが中心となり、いわば「人為的な単純ミス」と称されるものが多く、この事案もその一つと思われます。
この事案の不服申し立て事由は、都市計画法による同一用途地域にかかる利用制限(建ぺい率、容積率)に大きな差異があるケースの課税評価額の評定を問題としたものです。
判決は、地方税法による総務省の「固定資産評価基準」に則り「適正」に評定された「課税評価額」は違法といえないが、この評価基準の「適用項目」がひとつでも「適正に行われていない」ときは評定価格は違法となると云うものです。
適用項目としては①地域区分の選定、②主要街路の選定、③標準宅地の選定、④標準宅地の適正な時価評定、⑤主要街路とその他街路の各路線価の比準、⑥画地計算法の適用の6項目があげられています。この考え方は「鑑定評価基準」にあっても、いわば「当然の結果」といえます。
さらに重要と思える内容は「適正に価格を評定」した場合でも違法となるケースが2件ほど例示されていることです。
それは①固定資産評価基準の定める方法の適用に「一般的な合理性が欠如」している場合と、②当該事案に「特別な事情」があって固定資産評価基準に定める方法によるのみでは「合理的な価格」を評定できない場合があげられています。
この事案に関して、ネットに「勝った、負けた」等の発表が多くみかけられますが、それはともかくとして不動産鑑定士にとっても、この判決内容は、価格形成要因項目の分析で差異を判断する場合に、初心に帰って「一般的な合理性」をもたせる鑑定を行うよう大きな課題を与えられたものとおもわれてなりません。
正確を期するため、興味を持たれた方は以下の通り、法務省最高裁のホームページを是非ご参照ください。
最高裁第二小法廷
事件名 固定資産評価審査決定取消等請求事件
事件番号 平成24年(行ヒ)第79号
裁判年月日 平成25年7月12日
評価コンサルオフィス・ケン
不動産鑑定士 桂 健二
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 固定資産課税評価・桂健二・評価コンサルオフィス・ケン・課税評価額・車返団地事件・鑑定評価・鑑定評価基準 | 2014年7月22日