森島義博
いまNOW
最近、歳を取ったせいか「昔は良かった」と思うことが多い。人の迷惑を顧みずどこでもタバコは自由に吸えたし(昔の映画を見ればよく分かる)、「男らしさ」や「女らしさ」について語ることもできた。レジ袋はタダでもらえたし、インフルエンザはあったけどコロナはなくてマスクを気にすることもなかった。ビルだってそうだ。比較的出入りが自由で、用がなくても気軽にビルに入り込み、取引先の部署を訪ねて知り合いに声をかけたりしていたものだ。 今の近代的なビルはエントランスに入ると無機質な広い空間に駅の改札口のようなものが並んでい… [続きを読む]
2022年10月20日
いまNOW
この2年間、コロナ禍のために景気は低迷し、経済は停滞し、人々は巣籠り生活を余儀なくされて意気消沈の日々である。世の中は元気を失っているように思える。そんな環境の中、目立たないところで不動産市場が動いていた。海外投資家による大型の日本不動産投資が続いているのである。最大の理由は、やはり世界的なカネ余り環境にある。 中央銀行による金融緩和が継続し、低リスク資産である債券の利回りが極めて低くなっている。米国では量的緩和の終了が公表され、長期金利の低下に歯止めがかかっているものの、米10年債の利回りはなお 1… [続きを読む]
2022年1月20日
いまNOW
経済回復の進み方が上下に開く「K字型」経済が出現している。コロナ禍でも都心の住宅は高所得者層の購買意欲が高く、値上がりが続いているようだ。そうした流れとも関連するのか、一部屋67億6千万円という新築マンションが売り出されている。 原宿へ徒歩5分、「明治神宮前」駅徒歩2分の好立地。総戸数14戸というかなり小規模でプライベート性の高いマンションである。最上階で専有面積は627㎡(テニスコート3面が余裕に入る)。ほかにも300㎡前後で18億円前後の部屋もある。それにしても周辺マンションの5倍以上の単価・総額… [続きを読む]
2021年5月20日
いまNOW
子年は何かと騒がしい事件が起こることが多い。前回の平成20年は、言わずと知れたリーマンショックが発生した年である。 その前の平成8年は関西基盤の阪和銀行が戦後初の銀行破綻、その後日本経済は奈落の底に転落していった。本年も身構えておく姿勢が必要だろうと思っていたが、まさか新型コロナウィルスが騒ぎの原因になるとは…。 しかし今回の騒ぎで分かったことがいくつかある。まずはマスクである。こんなものが手に入らなくなるとは思ってもみなかった。そしてマスクを代表とする医療資源について日本がこんなにも脆… [続きを読む]
2020年6月20日
いまNOW
ハンコ?大好きです! さまざまな印材にいろいろな字体で緻密に刻印されたハンコ自体も好きですし、上質な朱肉で押された美しい印影を見るのも好きです。 不動産の仲介の仕事をしていた頃、多くの取引と同時に売買契約書などに押されるさまざまな印影を見て、ハンコと人柄の間になんらかの関係があるのではないかと感じて印相の勉強をしてみたこともあります。実印にしても、小さなハンコ、大きなハンコ、それらの字体の違いによって取引交渉の姿勢が違ったり、いわゆる悪相と言われる印鑑で不動産の売買を行う人は、どこか慎重… [続きを読む]
2020年11月20日
いまNOW
令和になって初めての元旦を迎えた。子年は十二支における最初の年でもある。ネズミは子孫繁栄の象徴とされ、今年はめでたいことが重なっているように思える。 不動産業界も都心部を中心に活況を呈している。しかし景気は循環している。今後の不動産市況を過去の子年に生起した事柄を振り返ることによって占ってみよう。 まず、前回の子年は2008年(平成20年)。言わずと知れたリーマンショックが発生した年である。回復基調にあった日本経済も破綻した。その前の子年は1996年(平成8年)。バブル期の過剰融資がたた… [続きを読む]
2020年1月20日
いまNOW
長期的な不動産市況を見るには、国土交通省の「不動産価格指数」が参考になります。今年の指数を見ると、2013年4月から始まった異次元の金融緩和策を契機に全ての用途での不動産価格が上昇しており、現在においてピークに達している、あるいはピークアウトしていると言った状況は読み取れません。 しかし、次のような短・長期的観点から、もうそろそろ不動産市況の転換期が来るのではないかとの観測もなされています。 ①金融政策がそろそろ変更されるのではないか。安部首相は自分の任期中に終了させると明… [続きを読む]
2019年5月20日
いまNOW
「平成」があと10ヶ月となった今、戦後73年の日本の変化の過程を如実に映し出してきた「土地」の動きを振り返るのも意義あることと考え、備忘としてまとめてみた。 1.戦後期 終戦の翌年、1946年にGHQによる農地解放が行われた。これによって地主・小作関係の開放が行われ、わが国から「大地主」といわれる者がいなくなった。1947年には日本国憲法が発布され、同29条や民法に私有財産制の保障が明記され、土地に対する所有権意識が強く浸透していった。 2.工業化社会の進展 1950年… [続きを読む]
2018年6月20日
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私が金融機関に勤務していたころ、20世紀最後のバブル時代の話である。 1985年のプラザ合意によって大幅な円高容認が行われ、円の為替相場は短期間に急伸した。その結果、米国債などのドル建て資産に含み損が発生し、資金が為替リスクのない日本国内へ環流した。一方、国内では円高による打撃を受けた輸出業界を救済するため、大幅な金融緩和が実施された。これにより、国内では資金が過剰に供給されて投資熱が加熱、特に株と不動産への投資が盛んになった。なかでも、土地神話を背景に地価は高騰し、個人も法人も不動産投… [続きを読む]
2017年3月20日
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初めて不動産の仕事を担当したとき、まず現地調査の研修から始めました。旧林野庁やJRなどの退職者で不動産調査専門の人たちが職場には居て、その方々に先生になってもらいました。私の先生になってくれた人は旧道路公団を退職した人でした。先生は現地調査に行くとき、私に「塩を小袋に入れて持って来るように!」と指示しました。「塩?」なぜだか分からないまま、塩を入れたビニール袋を持っていきました。先生は現地に着くと、塩を一つまみ撒いてから土地に踏み込みました。「なぜそういうことをするのか?」と問うと、「土地には長い歴史… [続きを読む]
2016年6月20日
いまNOW
「東京における緊急輸送道路沿道建築物の耐震化を推進する条例」(以下、「この条例」という)は、かなり異例な条例である。なにしろ、今まで完全に合法であった建築物について、従来行われてきたような一般的な普及啓発や努力義務に終わらせることなく、耐震化に向かって新たな義務を課し、東京都として直接的な働きかけを行うのであるから。 この条例は、平成23年3月11日に東京都議会にて決議された。そしてその1時間後に東日本大震災が起こったのである。そのとき議場には多くの議員が大地震の揺れの不安に耐えていた。… [続きを読む]
2012年5月21日
いまNOW
製造業、物流業、小売業を巻き込んだ物流システムの革新が起こっています。アマゾンをはじめとした新しい物販業者の商売の在り方が倉庫の在り方を革新しています。そこでは「サプライチェーンマネジメント」と呼ばれる、部品の調達から製造、販売までの複数の企業にまたがる物資の流れを<供給の連鎖>としてひとまとまりで管理する手法が取り入れられています。このような物流システムを支えているのがIT技術であり、よりきめ細かな在庫管理等を可能にし、物流スピードを激変させました。 このように高度化・複雑化する物流ニ… [続きを読む]
2013年4月20日
いまNOW
今年の不動産業界における話題は、何と言ってもアベノミクスと東京オリンピックだ。どちらも、景気が良くなって不動産業界を潤すように感じる。ホントか? 首相と日銀総裁が変わり、金融政策が大幅に変更されて20年にわたるデフレから脱却したと喧伝された。株価は急上昇、文字通り気分としての「景気」は良くなった。資産のもう一つの代表である「不動産」の価格も上がるだろうと思うのは当然である。ある仲介業者は、個人投資家からの収益用不動産の問い合わせが1年前の4倍になったと言う。リートは増資を行って新規物件の取得スピードを… [続きを読む]
2013年12月20日
いまNOW
最近、陰惨な事件・事故のニュースが目立つ。自殺や殺人事件、孤独死などがあった場所は、人の取得意欲を減退させる。したがって流動性を欠き、その不動産の価格は大幅に低下することになる。自分の所有物件で事件・事故が起こった場合の賃貸人の心情は、察して余りある。 不動産において、自殺や事件があったことは「心理的瑕疵」として認識され、不動産市場においては「事故物件」と言われ、キズモノと言う扱いを受けている。売買や賃貸をする場合には、相手側に告知をしなくてはならない。 判例では、部屋のベ… [続きを読む]
2014年9月20日
いまNOW
西新宿の堂々とした東京都庁舎、1990年12月に完成して既に24年経過しました。雨漏りがしたり外壁修理が必要になっていますが、複雑な意匠の大規模建築物の故、大変な資金が必要で困っているとのこと。こうしたビル管理「以前」の問題にプロパティ・マネジャーがもっと関わりを持てれば、低コストで快適なオフィス環境が提供できるという例は多いようです。 ○あるオフィスビルのリニューアルに関する打ち合わせの席で… 建築士A先生:「玄関の床はビルの顔にもなるので、鏡面仕上げの御影石を貼りましょう。上品で綺麗… [続きを読む]
2015年3月20日
いまNOW
大学の客員教授として学生に「不動産」を教え始めて10年以上が経ちました。研究室は不要として通常は非常勤講師室に居ます。今回は非常勤講師室の友人達をご紹介したいと思います。 まずは、最初に仲良くなった西洋哲学のH先生。57才、独身。鼻の下に髭をたくわえたスマートな紳士です。気に入ったのは、健康診断の話題になったときの彼の答え。「健康診断をして病気が見つかると困るから、私はしていません。私は西洋哲学を勉強してきたから、西洋医学者の考え方を知っています。彼等の、なんとしても生き長らえさせる、と… [続きを読む]
2015年11月20日