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コロナ禍を契機とした地方回帰の動き - 拜藤不動産鑑定事務所/拜藤聖

新型コロナウイルスが国内で初めて確認されてから、1月15日で一年を迎えました。未だ感染者数の増加も止まらず、累計(1月28日時点)の感染者数は38万人、死者は5千4百人を超え、2回目の緊急事態宣言が発出されるなど、感染収束の見通しが立たない状況です。

 

コロナ禍を契機とした地方回帰の動き

そのような中、東京都では平成25年以降で初めて人口の転出超過が発生し、注目されました。今後、コロナ禍を契機として、人々が住環境やライフスタイルの転換を求め、地方へ回帰する動きは起こるのでしょうか。鳥取市で鑑定事務所を営む筆者にとっても大いに関心のあるところです。

 

総務省が発表した「住民基本台帳人口移動報告」によると、東京都の令和2年11月の転出者数は約2万8千人(前年同月比+19.3%)、転入者数は約2万4千人(同▲6.8%)であり、5カ月連続で転出超過となりました。

 

同報告によると、埼玉、千葉、神奈川県の転入超過数は、前年同月比でそれぞれ4百人から1千人程度増加しています。これらを見る限り、現時点では東京都から隣接県への移住に留まっており、残念ながら地方への移住については大きな変化は無いようです。

 

では、どのような理由があれば、地方への移住が検討されるのでしょうか。「東京都在住者の今後の暮らしに関する意識調査」によると、東京都在住者が移住を希望しない理由は、「今の生活を変える必要が無い」「交通・生活利便性の低下」「収入の低下」「転職の困難性」などが挙げられ、逆に移住を検討する理由は、「出身地のため」「スローライフの実現」「食べ物がおいしい」などが挙げられています。

 

これらの理由をみると、移住を妨げる大きな要因としては、国内主要企業が東京都に一極集中し、「東京」でなければ就けない職種があることではないでしょうか。

 

仮に「フルリモートワークで出社は月1回」などの働き方を採用する企業が増えれば、「働く場所にとらわれない」という点で東京都に居住する理由が希薄化し、移住を後押しする大きな要因となります。

 

リモートワーク定着の可能性については、新型コロナウイルスの感染状況、収束に要する時間の程度が大きく関連すると思われますが、現在の感染状況を踏まえると、継続ないし拡大するのではないでしょうか。

 

地方移住については、その他にも様々なハードルがありますが、現下の東京近郊への移住の動きは、人々が住環境やライフスタイルのあり方を再考し始めた動きであるように思えます。数年前に喧伝された「スタバはないが広いスナバはある」鳥取県から、今後の地方回帰の動きを見守りたいと思います。

 
 

拜藤不動産鑑定事務所

不動産鑑定士 拜藤 聖

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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