三隣亡(さんりんぼう)は避けましょう - 鑑定法人エイ・スクエア/菅原健
今年の正月も普段は滅多に行かないのに初詣に出かけた。その際ふと思ったのですが、不動産取引や建築行事には縁起を担ぐことがなんと多いことか。
土地を買うときにカラ井戸があればお祓いをしてから埋める方もいます。建築に掛かるときの「地鎮祭」(土地の神様の気持ちを鎮める儀式)や、上棟式、竣工式の時などには神主さんにお祓いをお願いしたりする。
そして、これら建築に係る儀式は暦を見て「三隣亡(さんりんぼう)」の日は避けるべしと言われます。
元々は「三輪宝」といって「建てるに良し」とされる日であったのですが、明治時代に誰かが「建てるにあし(悪し)」と間違ってからは「三隣亡」の字が当てられ、この日に家を建てると「向う三軒」に災いが降りかかるという迷信が流行したのだそうだ。今年の暦を調べると28日もあるから驚きだ。
結婚、入籍なども「新しい家庭を築く」日であるから避けたほうが無難なんだとか。
ビルの玄関脇などに「定礎」と書かれた石板を見かけますが、実はこれ、建物が倒れないように、また施主の家系が繁栄しますようにとの「おまじない」なのです。
定礎の文字は施主の筆により刻まれ、その奥には設計図面とか、氏神様のお札とか、定礎式当日の新聞などをいれた「定礎箱」がタイムカプセルのごとく埋め込まれています。これをとり行う「定礎式」は石造建築の本場、ヨーロッパで始まったそうだ。
住宅が完成し引越しをするときには大安吉日を選ぶ方も多いでしょうが、なかには「方違え(かたたがえ)」といって、それまでの住まいから見て新居の方角が悪いとされる場合に、一度別の住まいに移ってから新居に引越す方までいらっしゃる。陰陽道(おんみょうどう)で言われる「凶方位」を避け、ワンクッション入れることによって「吉方位」にするのだそうです。
不動産会社に水曜日定休が多いのも、せっかくのいい話や契約が「水」に流れることを嫌って休みにしたと言われています。
このように不動産、建築にまつわる神事や縁起担ぎが多いのは、土地や家には神様が宿り、その土地や建物で幸せに暮らしたいと祈願することの現れなのでしょう。ただし、こだわりが過ぎると何も出来なくなりそうですね。
一方で、土地は値上がりを続けるという「土地神話」、中古よりやっぱり新築がいいという「新築神話」、賃貸に住み続けるより買ったほうが得だという「持ち家神話」などの神話もあります。時代とともにそれら神話の神通力にも陰りが見えてきたと感じます。
鑑定法人エイ・スクエア
不動産鑑定士 菅原健
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)