大都市と地方の情報「公開」格差 - 鑑定法人エイ・スクエア/畠山文三
仕事柄、全国の自治体を回ることが多い。調査対象の不動産が都市計画法や建築基準法などの規制に適合しているかを役所でまず調査するのである。
近年では役所のホームページを閲覧すれば大概のことは把握できるようになったのは有難いことだが、HPも含め調査した結果の〝満足度〟は大都市圏と地方都市ではかなり異なる。
総じて大都市圏ではこうした行政サービスは質・量ともに充実しているが、地方都市ではHP、窓口いずれにおいても大都市の役所の対応力に及んでいないように感じる。
都市と地方との財政力の差によるのだろうが、地方都市の役所を訪問した際には、そうした実情を理解しつつ、都市計画、建築指導、道路、水道、下水、埋蔵文化財などの担当課を回る。
節電のために暗い廊下を何度も行ったり来たりしていると心が折れることもあるが、それでも必要とする資料を収集できた時は満足感の方が勝る。
住民の方は他都市の行政サービスを体験して比べるような機会はないだろうが、当方は各地の役所窓口の対応ぶりを比較対照できるので、感心することや驚くことには事欠かない。
建物新築時の法的手続き状況が敷地配置図とともに記録されている「建築計画概要書」は鑑定評価にとって無くてはならない資料の一つだが、東京の各区役所などは申請書に必要事項を記入して提出すれば閲覧はもとより、写しも即座に発行してくれる。ところが、地方の役所では、「情報公開手続き」にかけるので写しが入手できるまで2~3週間かかると言われることがある。
やむなく閲覧という形での書き写しに時間を費やすことになるが、それでも敷地配置図は書き写せない。こうした同じ種類の文書開示に対する役所の異なった対応に疑問を呈しても、「当市ではこのような決まりになっている。」という回答しか得られない。
「地方自治」の精神からいえば、各自治体が独自の取り組みをするのは何の問題もないのだろうが、文書の開示基準については統一的な運用が望ましく、国も関与して欲しいと思う。文書の保存期間についてもしかりで、建物の経済的な耐用年数が長くなっているうえ、中古物件の流通拡大に向け官民挙げて推進しているのに、「20年」を超えた書類は保存年限が超過したため廃棄したと言われるとハタと困ってしまう。
個人情報保護との兼ね合い、無確認・違反建築物の売買の防止、営業用に収集する業者の排除など、各自治体は様々な観点から検討した結果が現在の対応ぶりに表れているのだとは思うが、時代の変化も反映させながら対処方針を見直していくことが必要だ。
鑑定法人エイ・スクエア
不動産鑑定士 畠山文三
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 建築計画概要書・情報公開・情報公開格差・畠山文三・鑑定法人エイ・スクエア | 2019年12月20日