琵琶湖畔のリゾート地の危機、第三の限界集落として - 鳰不動産鑑定/前田基良
外国人観光客ブームにより、京都、大阪の観光地では日本人よりも外国人観光客のほうが多い状況が続いています。今後も大阪万博等の開催によりさらに外国人観光客が増えていくと思われます。
私の住む滋賀県は、京都市と隣接し、琵琶湖がシンボルとなっています。近頃は琵琶湖一周を自転車で回る「ビワイチ」が人気であり、県外から多数の愛好家が滋賀県を訪れます。
またビワイチのほか、釣りや水上バイクなどの水のレジャー、スキーや登山などの山のレジャーも豊富であり、滋賀県は京阪神地方におけるリゾート地となっております。
滋賀県湖西部(琵琶湖の西側)では、昭和50年にかけて別荘分譲地の開発が進み、山裾に区画分譲された別荘地が広がり、琵琶湖岸でも同様の別荘や企業の保養所が見られます。
このようにセカンドハウス需要を見込んだ別荘地ですが、造成完了当初から思うように売れず、バブル崩壊を経て多くの空地が残存する団地となりました。その多くが調整区域に存しており、建築に関して制約が強く「売れない」土地になっています。
現在は一部がソーラー用地として利用されている程度で、閑散としております。管理する人もいないため、雑草が生い茂り道路も陥没が随所でみられ、住環境も劣悪となりつつあります。
そのような土地を相続した人は、相続財産の売却または譲渡を希望されますが、全く引き合いがなく、結局相続名義もそのままの放棄地となっております。まれに取引がありますが、大体が地縁関係者か、それこそ「嗜好品として」土地を保有する目的での購入者です。
このような、山村集落でも郊外の高齢化した団地でもない「第三の限界集落」としての別荘地をどうすればよいのか…検討すべき課題であると考えます。
話は飛んで、北海道のニセコ地区の話になりますが、当該地域は出資を希望する外資の定着と外国人観光客の増加により年間40%以上の地価上昇となっています。
多くの方は「外国資本ありきでの」繁栄だとお考えになるかも知れませんが、私はこのような状況の一因として「地域ブランド」が大きく左右していると思います。地域ブランドの確立が観光客の増加につながっていると思われ、結局、外国資本よりもまず、国内客にも認知されるようなブランドとしての「滋賀県」の確立が急務であると考えます。
滋賀県は琵琶湖のレジャーだけなのか、アピールできる日本の資産なのか、まずは滋賀県における状況について私たち住んでいる者のとらえ方が最初の課題となるでしょう。
鳰不動産鑑定
不動産鑑定士 前田 基良
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)