ベトナムの土地評価制度を支援する - 藤田洋美不動産鑑定事務所/藤田洋美
本年6月中旬、ベトナム天然資源環境省・土地管理総局(GDLA)と日本不動産鑑定士協会連合会の共同セミナーがホーチミン市で開催されました。このセミナーは、国土交通省と連携したGDLAへの土地評価にかかる支援協力の一環として行われたものです。昨年は同様のセミナーがハノイ市で行われました。
今回のセミナーでは、日本側からは日本の公的土地評価制度を中心に、日本が高度経済成長期に経験した経済発展と都市化に伴う土地問題をどのように克服してきたか等について情報提供が行われました。ベトナム側からは、都市における土地評価の実務と直面している課題についての報告があり、大変興味深く聴講しました。
ベトナムでは、近年の急速な都市化に伴って都市部の人口が急速に増加し、都市インフラや宅地、ホテル、オフィス用地等の需要が旺盛で、地価が急激に高騰しています。ベトナムにおける政府による土地評価は、政府が土地価格枠というものを各地域の土地の類型ごとに定めて5年に1度公表することとなっています。ただし、市場価格がその枠の上下20%以上乖離した場合には、その枠が調整されます。この価格枠に基づいて、省・中央直轄市の人民委員会が「土地価格表」を5年に1度制定します。土地価格表も市場価格と上下20%以上の乖離が生じた場合には見直されることになっており、市場価格に近付ける仕組みも組み込まれています。
しかし、セミナーで報告されたのは、地価の変動に対して既存の土地評価制度が十分に機能しておらず、省により制定された土地価格と市場価格に大幅な乖離が生じ、価格が二重に存在するという現状でした。調査結果によると、省によって定められた地価は市場価格の30%~40%程度の低い水準となっているとのことです。また、セミナーの最後に行われた意見交換会では、土地価格表による土地評価の問題点のほかにも、市場の透明性、情報開示やデータの整備等に関する課題についても議論されており、精度の高い土地評価を行うには様々な課題が山積していることが窺われました。
国土交通省は、今夏にはベトナム沿岸地域のハイフォン市において、公示地価の算出や実勢価格を算出するシステム構築の支援を行うプロジェクトを始動させます。ベトナムといった異なる環境において日本の土地評価制度がどのように適用され、ベトナムの土地問題のソリューションとなるのか、都市開発にどのような影響を与えていくのか注目されるところです。
藤田洋美不動産鑑定事務所
不動産鑑定士 藤田 洋美
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: ベトナム・土地評価制度・藤田洋美・藤田洋美不動産鑑定事務所 | 2018年9月20日