急行停車駅としての街並みに - 須藤不動産鑑定/須藤裕之
西武新宿線沿線に事務所を構えて2年目になる。最寄駅は下井草駅であるが、隣の急行停車駅である鷺ノ宮駅を利用する機会が多く、その都度、本当に急行停車駅かと疑問符が付く。そこで、鷺ノ宮駅とその周辺の街並みの将来性について検討する。
鷺ノ宮駅は西武新宿駅から数えて9番目の駅である。西武新宿線のルーツである武蔵野鉄道が1927年(昭和2年)に高田馬場-東村山間で開業すると同時に、同駅も開業した。鷺ノ宮駅は急行停車駅であり、急行利用で高田馬場駅まで約10分と都心部へのアクセスは良好であるが、駅舎にエスカレーターは無く、他の急行停車駅と異なり、駅前には核となるスーパーマーケット等の商業施設も無い。低層の小規模店舗等が中心で、「急行停車駅の割には、駅舎や駅前商業施設の充実度が低い駅」という印象が強い。
鷺ノ宮駅周辺の地価をみると、平成29年地価調査における中野5-1は1平米当たり735千円であるのに対し、各駅停車駅の西武池袋線中村橋駅付近の平成30年地価公示における練馬5-11は750千円、練馬高野台駅付近の練馬5-15は791千円と、練馬区の各駅停車駅前よりも低いのである。この結果に少々落胆するが、鷺ノ宮駅及びその周辺は、実は次の2つの事業により、街並みが変わる可能性を秘めている。
まず、中杉通り(都市計画道路・補助第133号線)の整備である。中杉通りは、阿佐ヶ谷駅方面と中村橋駅方面を南北に結ぶ都道で、その中間に鷺ノ宮駅が存する。この都道は、幅員約11mの片側一車線道路であり、車・歩道がいずれも狭く、バス路線のため慢性的に渋滞が発生し、駅前はいつも騒々しい雰囲気である。この都市計画道路が、平成27年3月末に事業認可され、遂に事業着手となった。事業完了後は車道も歩道も拡幅され、人、車、商店街等の街並みがバランスよく整備されると考えられる。
次に、西武新宿線の地下化あるいは高架化事業である。現在、同線は中井-野方駅間の地下化工事が進行中であり、将来的に鷺ノ宮駅も地下化あるいは高架化することが期待されている。西武新宿線沿線は踏切が多く、特に朝晩のピーク時は「開かずの踏切」となり、渋滞の大きな要因となっている。本事業が進められると踏切が撤去されるため、人や車の往来がスムーズになり、踏切音もなく、駅舎も大部分が建て替えられ施設も充実するはずだ。
この手の事業は、莫大な費用と時間を要する。近い将来、急行停車駅に相応しい駅及び駅前商業地域となり、誰もが利用し易く、誇りを持てる街並みになることを期待している。
須藤不動産鑑定
不動産鑑定士 須藤 裕之
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)