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“とりあえず共有”した相続物件の売却 - 鑑定法人エイ・スクエア/幸﨑任宏

 

現在92歳になる義母が5年前に相続した空家とその敷地は7人の共有になっており、固定資産税の負担按分等、管理が煩わしいので、早く売って欲しいとの相談を受けていた。その土地は、水路に橋を架けて公道に出入りするため、売るには難しい物件だったが、幸い、隣地の所有者と共同で両土地を併せて一括地として売却活動をしたところ、道路接面状況の改善が図れ、成約にこぎ着けることができた。

 

本件は、売主である7名の共有者のほとんどが高齢で、二次相続も発生していた。高齢の共有者ばかりだと、売却を進めていく上での意思疎通がスムーズに行かないことが多い。そこで、高齢の共有者の持分は放棄して貰うことにし、比較的若い二次相続人一人の単独所有としたのだが、それが早期の成約につながった。

 

相続時、遺産分割協議の煩雑さから逃れる?ため、または当面のモメごとを避けるために相続人がとりあえず「共有」しているケースは多い。しかし、年月が経つと、二次相続人を含む多くの共有者が“出現”し、売却するにも意思統一が図れなくなる。

 

共有者を少なくするためには、持分を「贈与」するか「放棄」するかの二つの方法がある。自分の持分を他の共有者に贈与した場合、受贈者には贈与税が課税される。持分を放棄した場合、民法上、その持分は他の共有者に帰属するが、これは単独行為なので「贈与」には当たらない。しかし、相続税法においては「贈与」とみなされて、他の共有者に贈与税が課税される。

 

「贈与」「持分放棄」とも、ここまでは課税関係に違いはない。しかし、それにより取得した不動産を売却する場合は、課税関係は異なる。売却した人には、譲渡所得税が課されるが、税額を計算する際、「取得費」の取り扱いが贈与の場合と持分放棄の場合とでは異なることによる。すなわち、「贈与」により不動産を取得した場合、受贈者は、贈与物件に係る贈与者の取得日・取得費を引き継ぐことになるが、「持分放棄」により取得した場合は、贈与税課税時の時価が取得費となる。したがって、共有持分を贈与した場合には、まず贈与税で時価課税され、売却する時にも再び時価課税されるが、引き継ぐ取得費を超える部分は二重課税されることになる。持分放棄の場合には、取得費の引き継ぎがないので、当局側の課税の実務では、贈与課税時の時価を取得費とすることから、二重課税はない。

 

そのため、共有持分の売却を行おうとする場合、事前に非課税枠などを基に、課税額が幾らになるかをしっかりとシミュレートしておくべきである。

 

鑑定法人エイ・スクエア

不動産鑑定士 幸﨑 任宏

株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)


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