回復軌道に乗った三大都市圏の地価 - 鑑定法人エイ・スクエア/畠山文三
3月18日に発表された公示地価は、三大都市圏の商業地では6年ぶりに上昇に転じ、デフレ収束を告げるものとなった。住宅地も、大阪圏は▲0.1%ではあったが、東京圏(1.4%)、名古屋圏(1.1%)とも昨年までの水面下から抜け出した。三大都市圏の商業地の地価は、08年のリーマンショックで大きく落ち込み、その後の回復度合いも住宅地より劣後していたが、一昨年12月の政権交代直後から急速に上昇テンポを速め、遂に今回、住宅地の上昇率を大きく上回った。とりわけ、東京都の商業地は、2.3%の上昇で際立っている。全国の地価上位10地点を全て東京3区(中央、千代田、新宿)内の地点が占め、うち銀座が4地点、丸の内、大手町、新宿が各2地点で、銀座と新宿の計6地点はいずれも9%を超える大幅上昇だ。
これらの高度商業地では、面開発が継続的に行われ、成熟した商業ゾーンが形成されている。街としての魅力が高まった結果、大きな上昇につながっており、東京郊外でも、駅周辺の再開発や交通利便性の向上等により、武蔵小杉、吉祥寺、立川などは駅前商業地だけでなく、背後の住宅地の地価も押し上げた。オリンピックの開催決定により、東京湾岸エリアに注目が集まったことも、東京の上昇率を大きくした。大阪では、JR大阪駅北側の再開発ゾーンの完成、「あべのハルカス」開業などがあり、名古屋圏はリニア中央新幹線の27年開業をにらんだ再開発の動きが地価上昇を後押しした。
上場不動産投資信託(J-REIT)が昨年購入した資産の総額は2兆2千億円を超え過去最高だったとのことで、地価上昇に不動産投信や私募ファンドの寄与度が大きかったことは間違いない。円安効果によって海外投資家の国内不動産投資も急増した。初めて1千万人を超えた外国人観光客も商業施設や宿泊施設の収益向上に貢献したことだろう。
今後の投資行動を考えるに、三大都市圏とりわけ都内の高度商業地や高級住宅地の賃貸不動産の収益利回りはかなり低下し、ターニングポイントに差し掛かっている。資材価格や人件費の高騰も気がかりである。地方中核都市へも目を向け、多様な用途の不動産への分散投資も進めていくことで、市場開拓を図りつつ収益性の低下を防ぐことが肝要だ。4月には消費増税という関門が待ち構えている。ウクライナ情勢も不透明であり、国内外の事件勃発が経済の足を引っ張るリスクは常に内在する。過去を振り返り、不動産市況激変時の学習効果を生かして、地についた不動産との付き合いをしていきたいものだ。
鑑定法人エイ・スクエア
不動産鑑定士 畠山 文三
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: J-REIT・三大都市圏・不動産・不動産投資・不動産鑑定士・公示地価・回復軌道・地価・畠山文三・鑑定法人エイ・スクエア | 2014年4月21日