俄か「大家」の脱帽 - 株式会社中央鑑定所 / 畠中政國
私の会社は総勢十人程の小さな不動産鑑定事務所である。
そこの社長を務める私が、「大家の悩み」を持つことになるとは!
事の始まりは、私も出資者の一人である合同会社が東広島市の中心市街地活性化事業の基本構想づくりを受託したことからはじまる。東広島市の西条は、兵庫の灘、京都の伏見と並び称される銘醸地のひとつであるが、その基本構想の中に「酒蔵通り」活性化のための「駅前屋台村」の建設運営事業があった。
平成二十年六月に八人の共同出資と市内六行の協調融資による借入れを原資として会社を設立した。屋台村は、当初計画では一棟九㎡で十一棟の予定であったが、うち二棟を倍の十八㎡とし、計九棟で構成した。設計では、青森県八戸市にある屋台村をモデルとしつつ、当市の目玉である「酒蔵通り」のイメージが生かされた。人口約十八万人の東広島市は全国でも数少ない人口増が続いている市であるが、この会社が屋台村を立ち上げた直後にリーマンショックが起こり、近時は、当市に工場を置くエルピーダメモリの破綻、シャープの赤字増大等により市勢の閉そく感が強まっている。
しかし、計画スタート時は町の景気は良く、元々豊かで、酒造会社が大地主である町の特性から、土地を売る者も貸す者も少なく、やっとのことで約三百㎡の土地を十年の定期借地で借りることが出来た。大家業の始まりである。当初、賃料は付近店舗に比べて高めの一棟九万円、保証金六十万円、出店料七十万円としたが、設定に無理があったのか、三店舗が空の状態でスタートした。
町づくりの一環として立ち上げたこともあって、株主八人は無報酬で、毎週水曜日に屋台村の事務所に集まり打ち合わせを重ねた。家賃収受の業務も会社で行っていたが、その内、家賃滞納、退店等々の問題に悩み、専門の不動産業者に委託することとした。しかし、この業者選定に誤りがあったのか、一向に改善される様子はなく、滞納額はどんどん増えていく。やむなく管理業者を入れ替え、その意見も入れて、家賃は七万円に引き下げ、保証金は三十万円、出店料なし、に改定した。
この業者の経営者はまだ若い女性であるが、以前からいろいろと提言してくれており、この度も当屋台村で婚活パーティーを行い、盛況であった。若い人達のアイデアを取り入れて、管理運営をしてくれているお蔭で、徐々に繁盛に向かっているのは嬉しいことである。この経験から分かったことは、「餅は餅屋」ということ。良い管理業者にお任せすると、かくも結果に反映するものかと今更ながら認識を新たにしている。
株式会社中央鑑定所
代表取締役不動産鑑定士 畠中 政國
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)