雨過天青 － 東京都中央区 －
８月下旬の東京は雨の日が多く、それまでの暑さはどこへ行ったと思うような気温が続いた。しかし、気温は少々低くても湿度が高いため、「秋が来た」というよりも「梅雨に逆戻り」の気分の方が近い。
その鬱陶しさを紛らわすため？上野の東京国立博物館で開催されている「台北 國立故宮博物院－神品至宝」展を鑑賞しに行った。そこに展示されていたのが宋の時代に河南省の官窯「汝窯」で焼かれた「青磁無紋水仙盆」。この青磁は、雨上がりのしっとりと水気を含んだ空の「青」を磁器に写し込めとの皇帝の命により作られたもの。かつて、台北の故宮博物院で見たことがあるのだが、「青の記憶」が定かでなかったため、今回、東京で“再会”を果たしたいとの思いもあった。その青は、やや灰色を帯びた青で、独特の色調のゆえ、凡人には表現が難しい。
数日後、９月に入って２日目の朝、東京の空は雨上がりの青に変わった。今年の夏は広島や長野で大きな土砂災害があり、農家にとっても日照不足が災いしている。中国語で「雨過天青」は、「災禍の後の光明」に喩えられる。今なお行方不明者の捜索が続き、多くの被災者が避難生活を送る広島市、災害復旧が進み安心した生活を取り戻せる９月であって欲しい。