過去の子年を振り返って不動産市況を占う - 森島不動産コンサルタンツ/森島義博
令和になって初めての元旦を迎えた。子年は十二支における最初の年でもある。ネズミは子孫繁栄の象徴とされ、今年はめでたいことが重なっているように思える。
不動産業界も都心部を中心に活況を呈している。しかし景気は循環している。今後の不動産市況を過去の子年に生起した事柄を振り返ることによって占ってみよう。
まず、前回の子年は2008年(平成20年)。言わずと知れたリーマンショックが発生した年である。回復基調にあった日本経済も破綻した。その前の子年は1996年(平成8年)。バブル期の過剰融資がたたって関西基盤の阪和銀行が破綻した。戦後初の銀行の破綻である。その後も破綻は続き、日本経済は奈落の底に転落していった。
その前の1984年(昭和59年)は日経平均が初めて10,000円の大台を突破するなど順調な経済発展を続けていたが、翌1985年にはバブルの直接の引き金となったプラザ合意がなされている。
その前の1972年(昭和47年)前後は混乱の年であった。前年1971年8月にはいわゆるニクソン・ショックで金本位制が終了。そして1973年10月に第四次中東戦争が勃発、「石油ショック」として国内外ともに大きな経済混乱を引き起こした。
こうして見ると子年はなかなかに騒がしい年である。今、我が国はバブルの発生と崩壊の痛手によって、結局何もしなかった平成の30年間の膿を出す過程にあるのか。好調を取り戻しつつあると言えども、なんとなく閉塞感は否めない。
最近、Japanificationと言う言葉を聞いて驚いた。日本の失われた30年間、つまり経済が長期沈滞に陥ることを指す言葉だという。世界はこの「日本化」になることを恐れているとのこと。なんと言うことだろう。
さぁ、今年はオリンピックの年である。世界が日本に注目する。派生効果を期待する向きもあるが、しかしオリンピック後は不景気になるという説もある。丁と出るのか半と出るのか。そして来年は総理大臣の改選の年。アベノミクスの重要な矢の1本として放たれた異次元の金融緩和政策がいつまで続くのか。金利が上がれば不動産価格は下がる。かと言って金融政策の余地は少ない。この間に膨れ上がった金融バブルは崩壊せずに済むのか。不動産業界は固唾を呑んでその動向を見守っている。
国内状況のみならず、米中貿易摩擦やブレグジット、中東問題等による海外経済の不透明感が引き続き内在しており、海外動向にも留意が必要である。子年から始まる今後については、身構える姿勢が必要なのかもしれない。
森島不動産コンサルタンツ
不動産鑑定士 森島 義博
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 不動産市況・令和・子年・森島不動産コンサルタンツ・森島義博 | 2020年1月20日