祝成人-「定期借地権」生誕20周年 - ㈱ヒルマ / 比留間康昌
借地借家法は平成4年8月に施行されましたので、定期借地権(一般定期借地権、事業用定期借地権、建物譲渡特約付借地権)は今年で丁度、生誕20周年を迎えたことになります。人間にたとえるならば、成人式を迎え、親元を離れ、自他共に大人の仲間入りを果たしたことになります。
当社の事務所がある東村山市では、都営住宅跡地で280戸に及ぶ戸建定期借地権分譲が実施されたり、また、郊外ではあまり目にしない定期借地権付のマンション分譲があったりと、定期借地権がより身近な存在に感じられます。ここでは、それぞれの定期借地権の成長過程を振り返ってみたいと思います。
【一般定期借地権】
定期借地権の祖とも言えます。当初は一般住宅で多く見られましたが、最近では定期借地権付マンションも多く、所有権マンションより低価格であることを売りに、南麻布、西新宿、渋谷等の一等地で大手デベロッパーが手がけています。
【事業用定期借地権】
平成20年の一部改正で契約期間が50年まで延長されました。24条から23条に「格上げ」になり、今となっては定期借地権の中心的存在です。借地権上の建物用途も、以前はロードサイド店舗が中心でしたが、最近では物流施設も多く見られるようになりました。契約期間終了を迎えたものもありますが、借地上の建物を取り壊して更地として地主に返還するよりも、むしろ再契約を締結するケースの方が多いようです。
【建物譲渡特約付借地権】
画期的な手法のため、当初は大きな期待が寄せられていました。しかし、30年以上経過した後における借地上の建物の「相当の対価」が不透明なため、十分普及していないのが実態です。
こうした定期借地権は、不動産の利活用のメニューに幅と深みを与えてくれました。しかし、旧法の借地権と比較すると取引慣行の成熟の程度は低いと言わざると得ません。旧法の借地権価格は、「更地価格の○○%」と価格を認識できる場合が多いのですが、定期借地権の場合はそのような形では把握できないばかりか、物件によっては、定期借地権価格が存在しない場合もあります。
親子関係においては、子供が成人すると対話が少なくなりがちです。しかし、定期借地権の場合は、まだまだ取引慣行が未成熟です。成人したからと言って目を離すのではなく、前FRB議長グリーンスパンがマーケットとの対話を重視したごとく、不動産を取り巻くプレイヤー達が定期借地権との対話を欠かさずに行って、定期借地権を育んでいければと思います。
株式会社ヒルマ
代表取締役 不動産鑑定士 比留間康昌
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 一般定期借地権・事業用定期借地権・建物譲渡特約付借地権・比留間康昌 | 2012年12月20日