所有者不明土地問題について - 評価コンサルオフィス・ケン/桂健二
日本の人口減少が国民経済や生活環境等に大きなマイナス影響をあたえてくると言われているなか、厚生労働省発表によると、2017年に日本国内の出生数は2年連続で100万人を下回り人口の年間「自然減」は初めて40万人を超える見込みで、毎年減少幅が拡大し人口減は深刻となっています。この問題は国民生活の基盤である都市政策に大きな影響をあたえており、地方創生の元、まちの集約、コンパクトな都市再生を計画している自治体は国土交通省のまとめによると2017年3月で309市町村、さらに増える傾向にあります。
このような計画遂行に問題となってきている事項のひとつに増え続ける「空き家」、持ち主が分からない土地、「所有者不明土地問題」です。空き家問題は2016年11月に「いわゆる空き家特措法」が公布、その後自治体中心に街並整備等を目途として着実に諸政策がすすめられています。所有者不明土地問題については国土交通省が法務省、農林水産省等の政府関係機関と連携、「所有者の所在の把握が難しい土地への対応方策に関する検討会」の最終報告により、いわゆる「所有者不明土地に関する探索・利活用のためのガイドライン」を2016年3月に発表しています。この問題については学会(都市政策、法曹等)、経済界(都市開発等デベロッパー等)から警鐘が鳴らされており、2017年1月発足の所有者不明土地問題研究会(座長増田寛也氏)が12月13日に最終報告を発表しています。マスコミでも、相続登記がなされていない土地を中心に、10月5日視点・論点「増加する所有者不明の土地」、11月20日あさイチ「どうする?実家の始末」などの番組で放送され、私も大いに興味を持ちました。土地総合研究所の定期講演会と国土計画シンポジウムに参加して、不動産鑑定士個人としても、この問題は大いに啓蒙していかねばならないものと再認識しました。
2018年は「所有者不明土地問題とこれからの対応のあり方」を土地所有、相続に関連して国民全体の問題と認識する元年となることを期待しています。
詳細または私の意見は紙面の都合上省略しますが、所有者不明土地問題研究会の提言「3つのあるべき姿」は次の通りです。
• 所有者不明土地を円滑に利活用または適切に管理できる対策(制度改善・創設等)
• 所有者不明土地を増加させない対策(所有権移転の義務化、責務、放棄等)
• すべての土地について真の所有者が分かる対策(土地情報基盤の構築等)
是非、以下をご参照ください。
• 所有者の所在の把握が難しい土地に関する探索・利活用のためのガイドライン(国土交通省ホームページ)
• 所有者不明土地問題研究会最終報告(座長 増田寛也)
以上
評価コンサルオフィス・ケン
不動産鑑定士 桂 健二
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: 所有者不明土地問題・桂健二・評価コンサルオフィス・ケン | 2018年1月20日