丑年の初めに - 鑑定法人エイ・スクエア/畠山文三
コロナ禍の終息の動きが見えないまま新年を迎えることになった。この1年で職場の風景は大きく変わり、在席で仕事をしている社員の数が減った。リモートワークが一応定着し、社員が「居ない」ことに違和感を覚えなくなった。
新型コロナウイルスの感染拡大で都心部を離れる動きが数字の上でも裏付けられている。昨年11月1日時点での東京都区部の人口は、前月比で7千700人余り減り、4か月連続で減少した。小平市や府中市などは増加しており、少々通勤時間がかかっても郊外の一戸建に引っ越す人が増えたようだ。
広い自宅の居室で効率的に仕事をこなすことができれば「働き方改革」の実現にも一歩近づくことになろう。しかし、リモートワークがどの程度「定着」するのかは、業種や仕事の内容によって“向き、不向き”があるだろうし、マネジメント次第でもその成果は大きく変わるはずだ。
上司はチームワークをどうとっていくのか、部下はモチベーションをどう維持し、高めていけばいいのか。古典的な考えかもしれないが、上司や同僚の仕事ぶりを見て聞いて、自分なりに考えることの積み重ねが人を育てることにつながると思うのだが、ズームの会議ではそれは叶わない。要は、出勤日とリモートワークの日を最適に組み合わせることで、コロナ以後の仕事のあるべき姿が見えてくるのではないかと思う。
兵庫県の淡路島。明石海峡大橋を介して今や本州と一体化しているこの「島」に本社機能の一部を移し、千人以上の社員を今後数年間で移住させるとの報道が話題になった。東京一極集中を是正し、地方の活性化を図るとの狙いがあるようだが、同じリモートワークでも家族の生活環境までも変えてしまう点で影響は大きい。
現在のマイホームをどうするのか、夫婦共稼ぎの人は?子供の教育、親の介護などなど容易に結論が出にくい問題を解決しなければ家族の同意を得ての移住は難しい。都会の便利な生活、溢れる情報や刺激に慣れた人にとっては、それらの難題と「広い家と青い海」のある生活を天秤にかけるのは、さらに酷な話である。
この1年が終わる頃、仕事の風景はさらにどう変化しているだろう。1年前、中国の武漢で正体不明の肺炎患者が発生しているとのベタ記事を大した関心もなく読んでいたことを思い出す。年の初め、近年続いた天災のことばかりを心配していたら、コロナの人災が天災以上の打撃を社会に与えることになった。今年は初詣も自粛なので、そっと心の中でコロナの早期終息と丑年の平安を祈ることにしよう。
鑑定法人エイ・スクエア
不動産鑑定士 畠山 文三
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)
TAGS: コロナ禍・リモートワーク・介護施設・浸水想定深度・淡路島・畠山文三・鑑定法人エイ・スクエア | 2021年1月20日