インバウンド観光と宿泊事業－ 評価コンサルオフィス・ケン／桂健二

日本政府観光局のリリースによると2019年の訪日外客数は32百万人近くまで増加しており、うちインバウンド観光客数も28百万人を超えています。しかしながら2020年度は新型コロナウイルス感染症拡大により前年比▲99％超と激減し、9月実績数は13,700人と前年比▲99.4％となりました。いずれにしても、この感染症が終息していかなければウイズコロナと言われてもインバウンド観光客数増加は当面期待出来そうにありません。

この状況下でも京都市内で高級ホテルの開業が続いています。3月から11月までに5カ所で開業しました。京都市の調べでは4月～9月のホテル新規許可件数は35件、数年にわたり概ね同じ増加傾向で推移する一方で簡易宿舎等（ゲストハウスなど）は100件超減少しています。

高級ホテル、日本旅館以外では、京都には寺社仏閣にかかる宿坊宿泊があることを思い出して調べてみると、意外と少ない感じがしますが15軒見つかりました。皆さんがご存知の聖護院、浄蓮華院、知恩院、妙心寺、妙蓮寺、妙顕寺等の宿坊の外に世界遺産に登録されている寺院の宿坊があります。それは仁和寺御室会館、東寺洛南会館、本願寺聞法会館です。

数が限られていますが非日常となる観光宿泊には最適と言える施設ではないでしょうか？　反面、設備や運営面から観光のための宿泊ホテルとまでは言えないでしょう。
それならば、宿坊でなく、宿坊と言えるホテル、すなわち寺社仏閣と一体となって建築された高級ホテル、言わば「お寺ホテル」はどうかと調べてみると有りました。

京都市内の中心地にある浄土宗浄教寺の「本堂と一体型」ホテル「三井ガーデンホテル京都河原町浄教寺」が9月に開業しました。また、大阪市内でも御堂筋沿いにある「南御堂」真宗大谷派難波別院の「御堂会館」の建替え事業として「寺院山門と一体型」ホテル「大阪エクセルホテル東急」が11月、グランドオープンしました。

これらは寺社仏閣側の収益事業推進と宿泊事業者側の観光ホテル事業推進がマッチングしたものと言えます。

ウイズコロナあるいはCOVID-19の終息後のインバウンド観光客増加を予測しながらの宿泊事業、ホテル業展開と寺社仏閣の観光発展、地方創生の一つの方策であり、今後ともこのような事業の推進が期待されます。

なお、「お寺ホテル」の鑑定評価にあたり、「一体型」であることがプラスの評価要因のひとつとなれば喜ばしいですがどうでしょうか？

TAGS: インバウンド・ウイズコロナ・京都・宿泊事業・桂健二・観光・評価コンサルオフィス・ケン | 2020年12月21日