「暑さ日本一」を更新した四万十市 - 植田不動産鑑定所/植田将司
本年の夏は高知県でも歴史的猛暑となった。ご承知のとおり、四万十市西土佐江川崎で8月12日に国内での最高気温を6年ぶりに更新する摂氏41.0度を記録した。また、7、8月の2ヶ月間に「猛暑日」を36日観測し、県内16の観測地点で猛暑日の日数総計が昨年の約17倍の172日にもなり、アメダスのデータが残る1977年以降で最多となった。
気象庁によると、全国的に猛暑となった要因は太平洋高気圧の勢力と配置にある。今年はフィリピン周辺の海水面の温度が高かったため上昇気流が発生し続け、気流の下降先である太平洋高気圧が活発だった。例年なら太平洋高気圧は東寄りにずれることもあるが、今年は長く西日本を覆っていたのに加え、大陸からのチベット高気圧が上空に入り込み、二つが重なった状態が続いた。高気圧の中では下向きの空気の流れが生じ、雲の形成を抑え日差しが地面を直射し、下にいくほど空気を圧縮し温度を上げる。また、雲が少ないと雨も少なくなる。7~8月に高知県内の16観測地点に降った雨量の合計は2,550ミリで、平年の9,995ミリに比べて極端に少なかった。地面を冷やし、気温上昇を抑える雨の少なさも、今年の高知県の猛暑の一因となった。
四万十市西土佐江川崎は県境に近い山間に存し、周囲の山から見下ろされる盆地となっている。盆地では、空気が太陽に熱せられて膨張しても山に遮られて周囲から冷たい空気は流れ込まず、上昇して逃げていくことが出来ない。従って、空気は熱したまま淀み、地表の気温は上昇しやすい。
このように、四万十市西土佐では、その地形やこの夏特有の気象条件などの要因が重なり、最高気温41.0度は偶然に、しかも突然にもたらされた。これによる地域の反応は様々であった。長く続いた高温による打撃は農業だけでなく漁業にも及び、四万十市名物の鮎の漁獲量は激減した。しかし、四万十川で知られる「清流のまち」に「日本一暑いまち」の称号がマスメディアにより加えられ、全国に報道されたことによって、国道441号線沿いにある「西土佐ふるさと市」には多くの観光客が押し寄せた。地元商工会等も「41℃プロジェクト」を立ち上げ、「暑いまちサミット」の開催企画を練ったりと、地域活性化につなげるべく知恵と工夫を凝らした。
これからの地方経済を浮揚させるためには観光業の発展は欠かせないものである。国内史上最高の暑さが地域の「熱気」と繋がり、四万十市を魅力ある観光地へと成熟させていくことを願っている。
植田不動産鑑定所
不動産鑑定士 植田 将司
株式会社ビル経営研究所の「週刊ビル経営」より転載(許諾済)